行方知らず

とりわけ有名な門で なんとか建っている門で下で
人っ子一人さえいない 日に日に朽ちていく門の下で

鈴虫一人しかいない いつしか嫌われた門の下で
さまよう行方がなくて 雨止み待っている下人がいる

夕焼けが似合う 黒い鳥が飛び交う

あなたは何を恐れるの? 何に飢えてるの?
迷っているの? 時は気ままに流れるだけ
それから誰も決して信じない 行方は知らない

愛とか正義など嘆き 生きてる男とはどこか違う
生きるか死ぬかだけ悩む Sentimentalismeぐらいだけで

ふと見た楼上に揺れる 光と人影が闇に動く
男は世の中のものに 盗人の勇気だけ事に掲げ

暗闇が更けて 黒洞々たる夜

あなたは何を感じたの? 何を見つけたの?
あざけてるの? 膿んだにきびを気にするだけ
下人は暗い夜の底へとかけおりた 行方は知らない

誰も知らない


解説

1999年10月12日〜13日作成。

芥川龍之介の「羅生門」だね。
国語の教科書に載っていていいなあこれで作ったやつ。
本に縁のなかった性格だったから羅生門は結構衝撃を受けたのを覚えている。